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葬儀のエトセトラ

火葬場にまつわるエトセトラ②

2025.07.20

火葬場にまつわるエトセトラ②

前回からの引き続き。今回は東京都23区の火葬場事情についてです。

 

 

東京23区の火葬場事情

東京23区には9カ所の火葬場があります。

先に触れたように日本全国の大多数の火葬場は自治体やそれに準ずる組織が運営する公営の火葬場であるのに対して東京23区の9つの火葬場のうち公営なのは2カ所だけで、残りの7カ所は民営の火葬場です。

民営の7カ所のうち、6カ所は東京博善株式会社が、もう一箇所を株式会社戸田葬祭場が運営、いや運営というよりは経営しています、とした方がよいでしょうか。

 

北九州市の人口は90万人(令和7年6月現在)、東京23区の人口は985万人(令和6年5月現在)ということで、東京23区の人口は北九州市の10倍以上となります。

あくまで北九州市を基準としますが、北九州市に2カ所の火葬場があるのなら、東京23区内には単純計算で20カ所くらいあってもよさそうなものですが、現実には9カ所しかありません。

北九州市で亡くなる方の火葬の状況を見た時に、それが滞る(火葬の順番を待つ状況)といったことはほぼない状態ですので、この状態を基準に考えてみると、東京23区の火葬場の少なさは異常と思わざるを得ません。

ここ数年、ニュース等でご覧になった方もいらっしゃるかもしれませんが、東京23区では圧倒的に火葬場(炉)の数が足りず、一週間前後の火葬待ちが発生しているということです。

また東京23区内の7割の火葬を行っている東京博善(株)の経営する火葬場に限って言えば火葬料は、一般の方が使う普通炉で90,000円となり、北九州市の6倍です。

尚、東京博善の火葬場にはいわゆるVIPが使う特別殯館という火葬施設があり、ここの使用料は160,000円、さらにVIP度合?が上がる貴賓館は295,000円。通常の火葬料も一定の条件をクリアすれば区民葬で火葬料は59,600円になるようです。

(それでも高いですけど。)

東京博善株式会社はパブリックな火葬業務を行っているとはいえ、一民間営利企業ですので、人件費や燃料費などが高騰すればそれに合わせて今後も火葬料は上がっていくでしょう。

(北九州市などの自治体が運営する火葬場の火葬料金が安価に抑えられ、景気の動向やコストの上昇に合わせて上がっていかないのは税金が投入されているからです。)

 

メディアによっては東京博善(株)社を「死を商売にする悪徳企業」的な報道をする向きもありますが、非難されるべきは火葬場対策を怠ってきた行政の様な気がします・・・

 

東京博善株式会社について

東京博善株式会社は先にも触れたように東京都内23区内において6カ所の斎場(火葬場)を直営する企業で、広済堂ホールディングスグループの一つです。

創業は明治20年ということですから、弊社中村組葬儀社よりも8年早い創業になります。さて、創業からの歴史についてはここでは触れませんが、ざっくりここ最近のお話をすると、印刷業などを手がける株式会社廣済堂(現・広済堂ホールディングス)が出資をし筆頭株主になった後、令和元年に創業者親族が中国人実業家・ラオックスの羅怡文氏に廣済堂株を売却するなど中国資本が流入、令和2年には廣済堂の完全子会社になり広済堂ホールディングスの代表取締役会長にその羅氏が就任しました。

当時は「日本人の火葬が中国資本に乗っ取られた」的な報道もあり葬祭業界に衝撃が走ったのでした。この騒動の中には村上ファンドや福岡県ではおなじみ麻生グループなどが登場することもあり、公共性の高いインフラである火葬業務が、一般の民間企業と同じく株式投資の対象となるという事態にさらされているのです。

難しい話なのでかなり端折ってしまいましたが、北九州市の火葬場が公営(市営)であるとことが当たり前になっている私たちからすると、いやはや大変だなと。

 

 

東京23区の火葬場事情の今後

 

北九州市と東京23区の火葬場事情をはそのままお葬式事情につながります。

東京23区の場合、お葬式をする前の段階の火葬の手続きと実際にお葬式をする前までの費用(ご遺体の安置・保管費用)だけで20万円程度かかってしまいそうです。

(ご遺体の安置・保管に使用するドライアイスや安置部屋の費用が一日10,000円くらい?と火葬料が90,000円)

それに加えてお葬式本体の費用や付随する費用(料理や宗教者へのお礼)がかかるわけですから、東京23区でお葬式をするというのはなかなか大変なことです。

 

昨年には、東京23区のある区では、火葬料が高額で負担出来ないと親族のご遺体引き取りを拒否した結果、「行旅死亡人」(ざっくりいうと身寄りなしの方としての対応になる)として区が火葬の費用を負担したという事例がありました。

 

悲しいかな人は必ず亡くなります。

誰にでも必ず起こる、本来公平・平等であるべき「死」と「火葬」に対して、これだけ費用に差がでてしまうのは、憂慮すべき事態です。

かと言って、日本の人口の推移を考えた時に東京都が新たに公営の火葬場を建設することはおそらくないでしょうから、火葬場不足と高額な火葬料は今後もあまり変わらず、東京23区の火葬場事情はしばらく大変な状況が続くと思われます。

そういう意味では北九州市のお葬式事情は恵まれているのかもしれません。

 

※北九州市に比べ、東京23区の火葬場の数が極端に少ないのは事実ですが、東京23区と北九州ではお葬式に関する習慣・風習やそれに関わる様々なシステムが違うので、お葬式の総額では一概に単純比較は出来ません。

 



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